HIRA'S DIARY

日常を記録しています

一番伝わる説明の順番

私は後期研修医です。

だいぶ前になりますが、

80代の自分の患者さんが子宮体癌の手術を受けることになった。A病院で脳梗塞に対して抗血小板剤が処方されているが、術前休薬が必要。内服を中断して大丈夫か?

をA病院の医師に電話で確認しなければならない、という場面がありました。

あまりにイケてない電話になってしまいかなり落ち込んだので、自分の職場での話し方を改善したいと思い、本屋で話し方や説明に関する本を購入して読んでみました。

この本を読んで、よくある以下の2つの状況でどう話すのが良いか考えてみました!

・コンサルトするとき

・手術説明をするとき

 

コンサルトするとき

多くの場合、コンサルトの相手は医師であり、忙しい、(そして短気かもしれないので)手短に話さなければなりません。

この本によると、説明は大きく自分主導の説明(自分に何か主張がある場合)と相手主導の説明(聞かれたことに答える)に分けられます。コンサルトするときはどちらかと言えば自分主導の説明に近い(逆にコンサルトされる側は相手主導の説明を求められる)と思います。自分主導の説明において話す順番は、

①前提を揃える

②結論・主張・本質

③根拠・理由・事実

④補足情報

⑤結論・相手に促したいアクション

です。

 

①の前提とは話す範囲、相手の理解状況、情報が共有されているかということ。前提は話すときに意識すべきことという感じでしょうか。たとえば、医師同士ならある程度の専門用語は理解できると思いますが科が違う場合などには略語を使わないなど、丁寧な説明を心がけた方が良いかもしれません。

 

②はコンサルトの主旨となります。いくつか例を挙げると

・入院/外来 患者さんの診察のお願い

・緊急手術を申し込みたい

・入院/外来 患者さんの薬の相談がしたい

・手術前の〇〇の評価をお願いしたい

など。

なるべく短い言葉でコンサルトに内容をまとめた一言で決めたいところ。相手が電話に出るまでのプルルル…の間にこの一言を考えておくと、その後もスムーズに話せそう!

 

③は患者さんの情報になると思います。

順番が大事と言いつつも、ここで何を話すか、その内容は非常に重要だと思いますが、特に意識すべきだと思ったポイント2点。

ひとつめは、相手が適切にアドバイスするために必要な情報を伝えること。最初の私のコンサルトの場合は、手術の日程や術式といったところでしょうか。

ふたつめは、短い言葉で具体的なイメージがわくように話すこと。「手術」よりは「子宮体癌の手術」、「子宮体癌の手術」よりは「開腹の子宮全摘術」の方が専門外の人でもイメージできそうです。

 

以上を踏まえて、こんな風に電話すればよかったかなという文章を書いてみました。

「〇〇病院産婦人科の〇〇と申します。そちらに通院されている患者さんの薬の休薬についてのご相談でお電話差し上げました。患者さんが当院で子宮体癌の診断がついたため10月中に開腹の子宮全摘術を予定しているのですが、そちらで処方されている抗血小板薬を周術期に休薬してもよいか確認させていただきたいんですけれども。患者さんは●●●さんという80代の方です。」

 

(ここからは持論ですが)先程の①②③④⑤を、コンサルトのときにパッと意識しやすいように書き換えてみました。

①挨拶・自己紹介 

②コンサルトの主旨

③患者さんの基本情報(年齢、性別、主訴、持病など) 

④聞きたいこと、依頼したいこと

 

②は前述したようなテンプレをいくつか考えておくといちいちマゴマゴせずに済むと思います。このコンサルトをもしメールで送るとしたらタイトルは?と考えてみましょう。

 

③は情報の取捨選択、話す順番が大事だと思いますが、なるべく電話している相手に具体的なイメージが湧くような順番、最低限の情報量で話したいところ。名前を言えば「あぁ、あの人ね」となる患者さんならまず名前を言った方がいいし、そうでないなら年齢+性別+主訴or病名の方がよいでしょう。(産婦人科の例:25歳の腹痛、32歳の妊娠16週、45歳女性の子宮筋腫、70歳女性の卵巣癌4期)

 

ちょうど最近初期研修医の先生が以前かけてきた電話がこんな感じでした。

「研修医〇〇ですがコンサルトよろしいですか。40代女性で昨日からの腹痛で内科にかかって今日うちに紹介されてきた人なんですけど、バイタルは安定してて、採血は問題なくて、痛みも来た時よりはよくなっているんですが、CTで卵巣出血が疑われているんですけど…」

依頼内容までが長い!(昔の私もこんな感じでしたが…)これを添削してみましょう。

「①救急外来の研修医〇〇ですが②婦人科に診ていただきたい方がいてコンサルトよろしいですか。③40代女性で腹痛で本日受診されたのですが、CTで卵巣出血が疑われるため④診察お願いしてもいいですか?」

 

添削ポイントは話す順番と、情報の取捨選択です。現病歴やデータはなるべく端折る。聞かれたら答えれば良いと思います。

 

長くなってしまいましたが、、後半戦です。

 

手術説明するとき

コンサルトと異なるのは、相手が患者さんであること、時間が長く取れることです。

復習になりますが、自分主導の説明において話す順番は、

①前提を揃える

②結論・主張・本質

③根拠・理由・事実

④補足情報

⑤結論・相手に促したいアクション

です。この順番は変わりません。

 

①の前提には挨拶も含まれると思います。私はあなたの主治医・担当医である、ということをきちんと伝えましょう。

理解度の確認のため、病気や治療のことをどれぐらい理解されていますか?という質問をするのもいいと思います。患者さん本人だけでなく、ご家族の認識を確認するのも大切です。

また、説明する情報が多くなる場合には、本題に入る前に何を話すのか、大まかに示すのも良いと思います。

 

②では「〇〇(病気の診断)に対する〇〇(予定術式)の説明をさせて頂きます。」とはっきり言うのが良いと思います。

 

③は患者さんのこれまでのサマリー、検査結果、手術の具体的な内容(麻酔や皮膚切開、合併症など)を話します。

 

④では患者さんに「何か質問はありますか?」と聞いて、細かいところを答えていきます。

 

⑤②を繰り返します。