HIRA'S DIARY

日常を記録しています

土足で入ってこないで

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※寒いかもしれないけど小説風に愚痴を書いてみます。

 

帰省するとたいてい母との言い争いが起こる。

今回は、1週間の帰省だった。

順調に、良い雰囲気で過ごせていたが、最終日にそれは起こった。

夕食後にみかんを食べていたときのこと。

 

「将来、発展途上の国の人のために海外で働きたいとか、そういうのはないの?」

仕事に関連した話で以前大喧嘩に発展したことがあったのでこれはマズイ予感と察知した。

「今はそういうのは考えられない。目の前の仕事、手術を一人前に出来ることになるのが今の目標だから。」

「私、失敗しないので、みたいな?」

米倉涼子の例のドラマである。そんな外科医は滅多にいない。

「そんなじゃないけど。今は手術が上手になりたいって思う。」

「私、帝王切開の神です!みたいな?」

なぜそんな言い方をするのだろう。さらに母は言う。

「最近は無痛分娩希望の人も多いぐらいだし、陣痛に耐えられないから帝王切開でお願いしますっていう人も多いんじゃない?」

「まぁそう言う人もいるけど、希望だけじゃやらないよ。帝王切開のリスクもあるからね。初回で安易に帝王切開にしたら以降も帝王切開になって大変だし。」

そう答えると強い考えがあるのか言い返してくる。

「2人目、3人目も帝王切開でやればいいじゃん。」

「手術は回数が多くなればなるほど後の手術が癒着なんかで大変になるの。特に皮膚切開が横のときとか、赤ちゃん出すまでにすごく時間がかかったりして。だから最近はなるべく縦の傷でやりたいなって思うし。」

私もムキになってしまった。皮膚切開の話はするんじゃなかった、と口に出してすぐに後悔した。

「縦とか横とか、そんなこと素人には分からないわよ。それにしても本人が帝王切開を希望してるのにやってくれないというのはニーズに沿ってない。それって時代遅れじゃない?」

…あぁだめだこりゃ。これ以上反論するとひどいことになってしまう。

「経腟分娩できるならそれが一番だと思うよ。なんでもかんでも帝王切開にすればいいってことでもないんだよ。」

と答えて話題を変えた。

 

なんとかひどい喧嘩にはならなかったものの、私は怒りを感じていた。

 

私が日々帝王切開の適応を悩みながら分娩管理しているのに、知識がほとんどない素人さんに「時代遅れ」と言われないといけないのか?

私が「帝王切開の神です!」と言うと思うのか?手術で怖い思いを経験した医師は患者の前で「手術は絶対に成功します」なんて言わないのだ。

分娩は嬉しいけど、怖い。

手術は面白いけど、怖い。

 

同業以外に仕事の話をしたくないわけじゃない。

でも、大切にしていることを分かってくれないのなら話したくない。